
キツ~イ体臭の代表的なのが、ワキの下からにおう「ワキガ」。
「ワキガ」はデリケートな問題で、なかなか誰かと大っぴらに相談できません。においを何とかすることにはひそかに頑張るけれど、そもそもの「ワキガの原因」はあまり知らないという人は多いでしょう。
ワキがにおうのは何も特別な体質なのではなく、程度の差はあれ、誰でもにおうもの。特にニオイが強い「ワキガ体質」は、日本人では少数派のような印象だと思いますが、実は、日本人にもワキガ体質の人が増えているのです。
では、それはなぜなのか?ここから、『ワキガの原因となっている4つのポイント』をご紹介します。ワキガは「ワキを清潔にしてさえいれば、完全にシャットアウトできる」という“都市伝説”が間違っている理由が、きっとスッキリわかるでしょう。
1.ワキガの4大原因、嫌なにおいの犯人は「汗」+「脂」+「菌」
体臭の代名詞のようにいわれる「ワキガ」の原因は汗です。
体から出る汗はすべて同じものと思われがちですが、実は汗には2つの種類があります。人間の体には、「エクリン腺」と「アポクリン腺」という2種類の汗腺があるのです。いずれも、一生を通じてこの汗腺が増えたり減ったりすることはなく、発汗作用を行います。
エクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺のほかに、皮膚には皮脂を分泌する「皮脂腺」もあります。体臭には、「アポクリン腺」「エクリン腺」「皮脂腺」という3つが関係しているのです。
出典:青山セレスクリニック
全身に分布している「エクリン腺」
普通の汗を出すのが「エクリン腺」という汗腺です。
エクリン腺から出るのは、粘り気が少なく、さらさらとした汗で、塩分を含んでいます。固形の成分はわずか0.3~1.5%で、そのほとんどが塩分(NaCl)であり、ごく微量の尿素、乳酸、アンモニア、アミノ酸などを含みます。
エクリン腺が存在しないのは唇などごく一部分のみ。全身に、ほぼむらなく存在し200万~500万個あるとされます。計算すれば、わずか1㎝四方の面積の皮膚に143~339個あることになります。なぜこのように小さな汗腺がたくさんあるかというと、ごく細かい粒として汗を出すことで蒸発しやすくしているのです。
皮丘(ひきゅう)に汗孔(かんこう)が存在し、出た汗は皮膚の表面に広がるようになっています。
気温が高くなったり、スポーツそして体温が上昇したりすると、エクリン腺から出る汗が増えます。これは普通の生理現象としての汗で、何ら異常ではありません。ごく正常な生理活動なのですが、大量に出ると、汗臭くなります。エクリン腺はもともと無臭なのですが、肌にいる微生物によって分解され、低級脂肪酸に変わるとき、酸っぱいような臭気を放ちます。
エクリン腺からの汗はほとんどが水で、ほかに少量の金属元素などが含まれています。成分の構成は、血しょうの成分とほぼ同じです。
なおエクリン腺の汗にはナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)といった金属元素が含まれていて、においのもとの脂肪酸をにおいのない金属塩に変える働きがあるのですが、汗のにおいの強い人の場合、この成分が少ないということが分かっています。
「皮脂腺」の不快なにおい
皮脂を分泌することで皮膚に潤いを与え、保護する働きがあります
エクリン腺から出る汗や、皮脂汗腺から出る皮脂にはほとんどにおいはありませんが、これに雑菌が混ざることで体臭が生じます。この2つの場合、つねに清緊に保つようにすることで、においをかなり抑えることができます。
また動物性脂肪なとりすぎると、皮脂腺の活動が活発になり、酸化して不快なにおいを発生させます。
体の特定の場所にある「アポクリン腺」
ほぼ全身にあるエクリン腺と異なり、アポクリン腺は、「ワキの下」「乳首」「へそ」「耳の穴の中」「陰部」「肛門」などの限られた部分に存在する汗腺。つまり体毛が密生する部分に多いということです。
体毛にはにおいを周囲に拡散させるという働きがあるので、ワキガの役目は異性を引きつけ、性的興奮をもたらすものということになります。このにおいが強すぎるのが「ワキガ」なのです。
出典:アトピー攻略ブログ
アポクリン腺の活動は思春期を迎えてから活発になり、中年期以降は治まってくるといわれています。アポクリン腺はホルモンの影響を強く受け、その活動は思春期になると活発になるため、二次性徴のひとつともされています。
アポクリン腺からの汗は、エクリン腺からの汗と比べて、やや粘り気があり、にごりもあります。中性脂肪や脂肪酸、コレステロールなどの脂質や鉄分などが含まれておりこれらの成分が雑菌の栄養になりやすいのです。
汗腺にとどまっているうちは、エクリン腺と同じように無臭なのですが、アポクリン汗は弱アルカリ性で細菌に感染しやすく、いったん発汗して、毛穴や毛、皮膚、空気中などに存在する雑菌に触れると分解されて、独特なにおいを発します。
アポクリン腺は、とくにワキの下に密集していて、ここが強い臭気を放つのが腋臭(えきしゅう)症、通称「ワキガ」です。
出た「汗」「皮脂」を「雑菌」がくさくする
ワキガの原因について以前、アポクリン腺から出る汗に含まれる脂肪酸やアンモニアなどを原因とみなす考え方がありました。
これに対して、1953年、シェリーという学者が「細菌説」を打ち出しました。アポクリン汗が細菌により分解され、揮発性の脂肪酸やアンモニア、水酸化物が発生するため、というものです。アポクリン腺から出た汗はにおいがありませんが、2時間くらい経つと悪臭を出し始めます。そのためシェリーは皮膚に存在する細菌がにおいに関与していると考えたのです。
いわば「アポクリン腺単独説」ですが、その後、出た説が、アポクリン腺の汗に加えて、皮脂腺やエクリン腺からの汗が混ざることで細菌が繁殖しやすくなり、しかも広く拡散しやすくなる、という説が出ました。これが現在では広く支持されるようになっている説です。
通常、皮膚表面は弱酸性ですが、大量に汗をかくとアルカリ性に傾き、雑菌が繁殖しやすくなり、すえたにおいになります。
においをつくるのが、皮膚にいる「ブドウ球菌」などの雑菌です。これらはアポクリン腺の分泌物から「カブロン酸」や「イソ吉草酸」といった物質をつくります。
2.アポクリン腺の数は「遺伝」で決まる
人種によっても「ワキガ体質の割合」に大きな違いが
アポクリン腺はワキの下、股間、乳首などに多くあります。思春期以降、毛が生えるようになると、その毛根を通じて原因となる汗を出します。性的な成熟にともない体臭が強くなるということです。
意外かもしれませんが、アポクリン腺は「男性」より「女性」に多い傾向にあります。
また、人種的には黒人に多く、次いで白人、それより少ないのが日本人です。民族ごとのワキガの比率では、
- 黒人系:約95%
- 白人系:約50~90%
- 日本人:約10~25%
というデータがあります。
出典:とりとめなき飲み屋
※「湿型」の耳あかが多いほど「ワキガ体質」の割合が高い
アポクリン腺の数は「遺伝的な要因」も
アポクリン腺は、真皮の下にある直径2~3㎜の粒々です。体毛のあるところにあり、毛穴に開いています。数ほかなり個人差が大きく、日本人の場合、1㎝四方に一つくらいですが、多い人になると50個くらいあります。
ワキガは遺伝性が強く、両視の一方がワキガなら、子どもは50%以上の確率で遺伝するといわれています。
出典:Pinky
遺伝のほか、食生活の違いも影響している可能性があります。肉中心の食事は皮脂腺やアポクリン腺を活性化するとされますが、穀類や野菜を多く食べてきた東北アジア人種に体臭が少ないのもその証拠といえるかもしれません。
日本人にとっての問題はむしろ比率の小ささです。全員にワキガがあれば、においにも慣れますし、誰も自分が特別だと悩まなくてすみますが、日本のように少数派だとどうしても気になりやすい社会環境ということになります。
食生活の変化でジワジワ増加する日本人のワキガ体質
ニオイを気にする人が増えている一方で、日本人にもワキガ体質が増えています。これは敏感な人が増えたので、ワキガと認定する範囲が広がったわけではありません。
じつは、「食生活の変化」が体臭を変えてきているのです。
もともと日本人は野菜中心の食事をし、肉を食べる機会などほとんどありませんでした。ところが近年、高タンパク質、高栄養な食事が増えてきています。こうしたものが、ワキガ体質を強めてしまうのです。特に、「脂肪分の多い肉類」や「スイーツ」「スナック菓子」などは危険。
とはいえ、外食で野菜中心のメニューを食べ続けるのは、そう簡単なことではありません。その一方で日本人はどんどん忙しくなり、自炊できる時間的余裕がない人も増えています。こうした状況で「ワキガ体質」が増えていくのは当然でしょう。
一方、ワキガ体質の人々の周りでは、ニオイに敏感になった人がどんどん増えているのです。当人の耳に届かなくても、ワキガに関する噂が職場や学校で交わされる可能性は高まっているでしょう。本当にワキガであるなら、放っておいてよい問題ではありません。
救いがあるとすれば、ワキガや多汗症の根本解決方法である手術が、より危険性も後遺症も低い、手軽なものへと進化していることです。今後も続くであろうワキ体質の増加と、ニオイへの神経質な動きへの対応策としては、十分に選択枝に入るといえるかもしれません。
なぜアポクリン腺があるの?
生物は進化により、生きていくために必要な機能を獲得しているはずです。
そこで不思議なのがアポクリン腺です。人が避けたがるようなにおいの原因になるのだとしたら、なぜそのようなものをヒトの体はそなえているのでしようか?
人類がヒトとして進化する以前の動物の時代、全身は毛に覆われていました。またヒトには無い発情期があったはずです。限られた発情期の期間に子孫をつくるには、異性を引きつける強いサインが必要です。それが、アポクリン腺から分泌される汗をもとにした「ワキガ」であったと推測できます。
しかしヒトとして進化し、直立歩行し、全身をおおっていた毛がなくなり、一定の発情期がなくなると、アポクリン腺の役割がなくなっていきました。
アポクリン腺の位置も、かつては性器や肛門周辺が中心だったはずですが、ワキの下や乳首、陰部などに残されることになりました。
アポクリン腺が性的意味合いを持つという仮説は、思春期を迎えたとき活動が活発になり、ワキガがあらわれるという事実からも裏づけられるでしょう。
また、アポクリン腺は体毛と一緒に存在することも意味があります。においは毛に蓄えられ、性的に興奮したとき、アポクリン腺から汗が大量に出て揮発し、周囲ににおいがまき散らされるのです。つまりワキ毛は、セクシーなにおいを拡散させるための道具なのです。
ワキガは人類の祖先にとって性的な興奮をもたらしてくれるものでしたが、無臭や清浄さを好む文化的な影響もあり、現代の日本ではすっかり嫌われものになってしまったのでしょう。
それでも、愛する人であれば、ワキガのにおいは心地よく感ずる、という人も少なくありません。体から発散されるにおいは全否定されるものではなく、異性をひきつける役割もあるようです。
異性を引きつける「何か」を「フェロモン」という言葉で表すことがあります。フェロモンとはどういうものなのでしょうか。排卵期の女性のワキからは「アンドロステノール」の分泌が増えるといいます。また男性のワキからは「アンドロステイン」という物質が出ます。これらの物質は異性をひきつけるものかもしれません。
ワキの下にはさまざまな微生物が存在しますが、とくに「コリネフォーム菌」「ジフテロイド菌」がにおいの原因をつくります。
3.さまざまな病気にかかわる「ストレス」はワキガにとっても大敵
現代は「ストレスの時代」です。会社で、学校で、多くの人がおさまざまなストレスを抱え、苦しみながら過ごしています。いろいろな情報が世界中を一瞬のうちに飛び回り、瞬間的な判断力を求められるような環境は、心にも体にも確かに重荷でしょう。
こうしたストレスが少しずつ心身にたまっていき、悪影響を与えることは、多くの人が知るところです。緊張の連続で胃が痛んだり、難しい問題を考えているうちに体調を崩してしまったり。おそらくアナタ自身も、そうした経験をお持ちなのではないでしょうか。
ストレスはワキガにとって大敵
ワキガ・多汗症体質の人は、汗をかくことにある種の恐怖心を持ってしまいがち。汗をかくと「二オイを発していないか」「臭いと思われていないだろうか」と、とても気になるのです。
「それがまたストレスになって汗をかく」という悪循環に陥ってしまいます。ことに最近は、気温や体温に関係なく、手のひらや足の裏などに汗をかく「手のひら多汗症」が急激に増加しています。
その理由としては、
- ストレスの増加
- 環境の悪化
- ワープロやパソコンの普及によって、体全体ではなく指先を頻繁に使うようになった
ことなどが、指摘されています。
また、ストレスの影響を受けているのは働く男性ばかりではありません。社会進出が進むなか、女性も男性以上にストレスの影響を受けています。その影響の一端が、ワキガの増加にも表れているのです。
ある統計によると、女性のワキガ発生状況はフルタイムワーカーと学生が圧倒的に多く、専業主婦は比較的少ないという結果が出ています。そして、女性の中でもより責任の重い地位にいる人のほうが、ワキガになりやすいという結果も出ているのです。
出典:ガールズちゃんねる
専業主婦の方にも家事や子供の世話、さらに近所づきあいなどのストレスがあるはすですが、仕事の場面でのトレスは、それとは質の違うものなのでしょう。
近年、さまざまな病気との関連が少しずつ解明されてきたストレス。ワキガ・多汗症も、そのストレスと無縁ではありません。
まとめ
アポクリン腺や皮脂腺は、制汗剤などで活動を抑えることはできても、数そのものを少なくすることはできません。どうしても気になる人は、専門医に相談することをおススメします。
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